Standing Tinco Belay

目指せセクシー登山部

積雪期(5月) 単独 黒部横断 2019/5/3-5/9

5/3~9に単独で黒部横断しました(遠見尾根~五竜岳~東谷山尾根下降~S字峡~ガンドウ尾根~池平山~剱岳~早月尾根下降)。五竜以降は下山日までヒトに会うこともなく、自分のトレースを引くことができて充実しました。結果的には殆ど晴れましたが天気予報にも一喜一憂する日々で、久しぶりに緊張感を持って取り組んだ山行でした。



5/3  11:00テレキャビン 15:45西遠見山 手前2160m 晴れ強風

夜行バスで長野駅に朝6時頃到着。路線バスに乗って、五竜スキー場まで移動。

テレキャビン・リフトを乗り継ぐ。リフト上部から風が強い。スキー場スタッフによると昨日よりはマシとのこと。主稜線はさらに風が強そうなので、五竜岳を超えることはやめた。西遠見山の樹林帯にテントを張る。夜テントに1人で寝ていると心細くなり、五竜岳ピーク踏んだら帰ろうかなと思う。

  

5/4 2:00起床 4:00出発 6:30五竜岳 18:00東谷山尾根1540m 晴れ

トレースに沿って歩く。4:30には明るくなった。GWの山でトレースを辿るだけなら、もっと早く出発できると感じた。主稜線の一部トラバースが意外と固く緊張する。五竜岳の山頂で2,3人と記念写真を撮りあい下降に移る。岩稜帯がしばらく続き、アイゼンの消耗を考えるとショック。S字峡まで今日中に降りるつもりだったが、2300m過ぎて樹林帯に入ってから、腐った雪の踏み抜きや、ルートファインディングの手間で意外とペースが上がらない。尾根上はシュルントが開いているので、斜面をトラバースしたりする。2001mピークすぎて懸垂3~4回ぐらい。2001mピークの西側斜面に入ってしまい時間食ったので、崖が出てきたらさらに尾根の南西(奥に入る気持ち)で降りたほうがよさそう。2290m~1950mあたりが意外と要注意。晴れてるので尾根の概観をつかみながら下降できた。あんまりミスはしたくないので時々スマホGPSをチェックする。尾根が平坦になってからも意外と長い。雪の踏み抜きもあり少々ばてる。771m~1647mにかけての平坦地はGPSホワイトアウトナビゲーションで一気に移動。1647mの尾根の降り口付近に何故かワカンが置いてあったので木にかけといた。今後尾根の降り口の目印になるかもしれない。かなり綺麗だったので、持って帰ってメルカリで売るか悩んだ。

1540mで行動を打ち切って、ケモノ道の上にテントを張る。

 

5/5 4:18起床 6:00過ぎ出発 10:00S字峡 16:40ガンドウ尾根1400m 晴れ

前日、遅くまで行動したこともあり寝坊した。雪を食べて水分補給しながら、ガンガン降りてゆく。1109mのピークでピンクテープがあり、辿っておりたところ、仙人ダムの正面へ降り立ってしまった。関電の作業用道だと思う。今回は歩いて降りることができたが、下部斜面は捨て縄が結構残されていた。本来はピンクテープに惑わされずに尾根を進むと、送電線の下を通るはず。仙人ダムの鉄橋内部を通るトロッコが見えた。S字峡ではなんと、auの電波が通じた。時間は10時を過ぎており、雲切谷・仙人谷ともに雪解け水は多く、上部も切れてそうだったので、渡るのはやめる。

 

黒部川の水を大量に飲んで水分補給した。

S字峡の吊り橋は、手すりが細く距離も長いので、意外と渡るのが怖い。

橋を渡った後、20mぐらい左にトラバースした後、藪を伝って尾根を登る。

途中、日電歩道の夏道が露出しており、楽する。

ヤブグレードは大したことがないが、荷物が大きいため、よく引っかかり、頑張って登っても最初は1時間に100m程度しか標高を稼げなかった。尾根1400m付近ヤブをのこぎりで切って、テント泊。ツボ足。

Auの電波が通じて驚いた。

 

5/6 2:15起床 4:15出発 11:00ガンドウ尾根1980m

午後から天気が悪くなる予報だったので早めに出発。尾根上にしっかり雪がでてくるようになり、シュルントの巻きや雪壁の処理。尾根上をいくべきか、トラバースするべきか悩ましいところも多数。au携帯電波通じず

 

11:00過ぎて、雲がでてきた。雪も腐ってきたので早めに行動を打ち切り、1980mで幕営。スノーブロックでテント周りを補強し備える。

14:00前からパラツキだし、15時前から降り出す。防風壁とテントの間に雪がたまったので、夜中一回テントラッセル。積雪20~cmぐらい。

 

5/7朝 8:50出発 12:00池の平小屋 15:00池の平山 18:38小窓

濡れるのが嫌で雪が止むのを待ったが、なかなか止まない。

外を見るとたいしたことないので8:50出発。

この朝は携帯電波通じた。

テン場からすぐ先、細いリッジを渡るのに苦心する。地形図では細い尾根上。

登っている最中、ガサガサ大きな物音がしたかと思うと、100mぐらいまえにクマがいて、

雪斜面を猛スピードでダッシュして逃げていった。傾斜のあるあの斜面をダッシュできる生物に人間が勝てるわけがない。

雪面から木に飛び移ったが、コケて前足でぶら下がっている様は可愛かった。そのままぶら下がっているので、ヤッホーと声をかけたら、こちらを見てきた。目を合わせないようにしてたら、そのままゆっくりと去っていった。

 

 

仙人山の登りでは、ガスで視界が無くなるときもあり、時々雲が晴れるのを待ちながら登る。

 

池の平山への登りは、延々と膝下ラッセルを続けながら登る。意外と長い。

池の平山から小窓へはすぐ降りられるだろうと考えていたが、意外と悪い。

尾根の西側は崖で、東側はシュルントが口を開けており、なかなか楽に降りられない。

ヤブを伝って降りる。最後、30m懸垂4回して小窓へ降り立つ。

日没直前に小窓に到着し、さあテントを張ろうと、まずヘッドライトを探したら全く見当たらず、ショックを受ける。池の平山で休憩したときに、置き忘れた。

ヘッドライトが無いことに気づいた際は、血の気が引いた。

 

完全に暗くなる前にテントをはらなければならない。池の平山まで戻ることも一瞬考えたが、時間的労力的に無理。風も吹き出してきた中、慎重にテントを張った。

テント内では頭にスリングでiphoneを巻き付けて光源にした。

夜間や早朝の行動が出来なくなり、しばらく気が動転していたが、アルパインクライマーたるもの現場判断できなくてどうする、冬季マッターホルン北壁でアイゼン落とした小西政継や、アラスカの冬壁でアウターブーツ落としたスティーブ・ハウスより、1000倍状況はマシだ、と思い寝た。

 

 俺が山でした忘れ物一覧

 3月北鎌尾根  北鎌のコルでサーマレスト落とした

 5月天狗尾根  サングラス忘れてヘルメット無くした

 9月モンブラン ヘッドライト忘れた

 2月足尾    松木沢ジャンダルム登ったあとATCガイドとか一式置き忘れた

 

5/8 4:00起床 6:00出発 10:20三ノ窓 11:30池ノ谷乗越 14:00山頂 16:45早月尾根2586mコル (2614mピークの北西側)

ヘッドランプ無くて暗い中行動できないので、早起きする必要が無くなった。

と思っていたら寝坊した。

小窓尾根の主稜線に向けた登りは、最初吹き溜まりのラッセルで意外と時間食う。

 

主稜線に達してから、小窓尾根を登る。まあ雪稜なので、そんな大したことは無いが、シュルントに気をつけて登る。

(小窓尾根の側稜は結構ギザギザしている)

一箇所トラバースでロープを出した。雪に埋まりかけたヤブ岩稜ぽいところをトラバースしようとしたら意外と悪かったので、一旦引き返し、20-30mほどロープをだした。

小窓ノ王のほんと基部に(尾根側では無い)懸垂支点があったので、念の為4回ほど懸垂。だんだん日もあたりだしシュルント踏み抜くのが怖かったので、、

池ノ谷ガリーは、この時期だと大したことはない。ところどころ凍っているところもあった。

池ノ谷乗越からピークへの登りのほうが傾斜がきつかった。

そこからの稜線は、尾根が細く、雪も腐ってきて怖いところもあった。かなり慎重に登っている中、雷鳥がのほほんと佇んでいるのを見ると、笑えた。

 

長次郎の頭からは、尾根上は岩稜でとても歩けないが、長次郎谷側を巻くことで想定していたより楽に降りられた。

剣岳に向けた、最後の急斜面は雪質もちょうどよかったので、ノーロープで登る。

剣岳に14:00到着。別山尾根方面から登ってきたスキーヤーのあとがある。

 

下降もミスはできないので気合いを入れ直す。

 

早月尾根へ降りるトレースが残っていることを期待したがなかった。

頂上から早月尾根、別山尾根の道標を過ぎ、最初のルンゼを懸垂下降し、折り続ける。雪が腐って雪団子だらけで大変。トレース跡もところどころ残っており、晴れて視界も良いので、折り続けられた。カニの横ばいとかは、雪に埋まってる。

獅子頭あたりで懸垂下降1回

2614mピークすぎて、2586mコルで幕営

 

5/9 4:05起床 6:30出発 10:45馬場島

早月小屋に降りるまでは、まだ気が抜けない。シュルントが大きくなっているところもあり、気をつけながら下降する。早月小屋手前あたりから、トレースがしっかり残っているようになり、下降が楽になってくる。

早月小屋からは、とにかく雪がしまってるうちに降りようと、ダッシュして降りる。

松尾平より上部で、登ってくるパーティに会う。

五竜から来たとちょっと自慢して、そのまま降りる。

松尾平でタクシー予約して、10:45馬場島着

 

 

 

反省点

・ストック2本いらなかった。トレースついた遠見尾根でしか使わなかった。滑落に備えてアックス・ストックの区間、ダブルアックスの区間のほうが多かった。登りなら縦走用で十分。下りもダッシュで降りるときは、初期制動用に2本持っていた。藪こぎは、アックスしまうし。

 

・クロスオーバードーム最高 

雪で素材が完全に密閉されると、息苦しくなることがあった。

収納袋は、大きいものに変えるべき。小さすぎて雪山で使ったらと絶対収納できない。

 

・5/3-9 、7日間でのガスの消費量260g。    少なすぎい。1日100g 予備日75g程度程度で計算

                                                                              ガス管大1 小2個

・レーション 2.1~3kg持ってて、最終日200-300gのあまり程度だったので、ちょっと少なく感じたが、こんなもん?停滞日はほとんど食う必要ないし。

・お湯プラティパスアイロンで、ネオプレンソックスやインナーブーツ乾かした

 

 

・GWはシングルブーツで良い。

寒くないから、ブーツが濡れても構わないと思う。濡れを嫌って、プラスチックブーツ兼

ネオプレンソックスにしたが、やはり暑すぎた。案の定靴ずれ担った。

いまのネパールエクストリームは防水性が落ちすぎて絶対濡れるだろうから、

下山後3間足がむくんで、 靴ずれ、(ネオプレンソックスのシワに起因する)が引き伸ばされ結構辛かった。

靴ずれは5-7日は違和感があった。

・GWの雪は汚いが、水っぽいので、非常に水つくりが楽だった。

小便が出ない夜もあり、全体的に暖かいので、あまり水を飲む必要性を感じなかった

しかし意図的に大量に飲むべきだった。

・ウンコが仙人小屋付近に到達するまで4-5日全く出なかった。多分脱水と、ラードを毎日摂取していたことに起因する。クマなみのぶっとすぎるうんこがでて肛門が切れそうだった。

 

・コンパスの中に空気入ってルーファイしづらかった

東谷山尾根の下降中に気づいた 最初コンパスが完全に使えないかと思いショックを受けた。空気を上手くどかすと、ブレるけど使える。SUUNTOのコンパスは数年で気泡が入ってしまう。